旭化成[3407] 第127期定時株主総会
場所:ANAインターコンチネンタルホテル東京 プロミネンス
日時:2018年6月27日(水) 午前10時

[2019年の記事はこちら]

旭化成の株主総会出席は今回が初めてです。

会場の出席者数は700名程度でした。
直帰の方含めると倍はいそうです。

議長は小堀社長が務めました。
総会の流れは以下の通りです。
・監査報告(小林監査役)
・事業報告(動画)
・対処すべき課題(小堀+スライド)
・議案説明(小堀+スライド)
・質疑応答 10時36分~
・議案採決
・新任取締役紹介
・伊藤会長退任あいさつ
閉会は12時19分です。

質疑応答の形式は以下の通りです。
-質問希望者は色付き出席票を掲示
-マイクまで移動
-数に制限なし
-議長が質問をまとめてから回答
-7人目終了時に残り2問と予告

1-1 今期業績予想が増収減益になる理由は?
小堀「前期は為替が比較的安定し事業運営しやすい環境だったが今年は春先から円高に動いている。今期の想定為替レートは1ドル105円に設定。海外売上高は全体の38%まで増えており、住宅を除いたマテリアルとヘルスケアに限ると55%を占める。1円の円高で営業利益が10億円減少するため、昨年からは為替要因だけで60億円減少した。また将来に向けて成長投資を実行している。今年後半~2020年にかけて立ち上げるプラントを多く抱えている。AIやIoTへの先行投資も。市況面でも昨年は中国の環境規制強化やアメリカの大型ハリケーンの影響により化学は好況だった。今期は一部の石油化学関連市況を昨年より堅く見ている」
2-1 旭化成と東レの差についての見解を聞きたい。
小堀「他社と比べるのは難しい。自由闊達であり上下の壁がなくコミュニケーションが取れている職場環境だと思う。また現場力が強い点も。タコツボ化しているところがあったが横の繋がりを強化している」
2-2 グループ全体における繊維事業の割合について。
小堀「売上高は1560億円で全体の6.6%、営業利益は121億円で6%強。繊維はマーケット環境が厳しく、グローバルで戦えるユニークな4素材に絞った。規模は小さくなったが各事業で拡大投資していく。収益性の高い事業の一つとして今後も力を入れていく」
2-3 杭打ち問題での賠償請求額459億円のうち旭化成建材の負担割合は?
柿澤取締役「建て替え費用を負担する三井不動産レジデンシャルが、三井住友建設と日立ハイテクノロジーズと旭化成建材に損害賠償請求をしている。建て替え費用と住民の仮住まい費用、慰謝料などの総額が459億円。全額の請求には根拠がないと考えているので裁判で訴えていく。額は裁判の争点なので回答は控える」
小堀「グルーブ全体の財務体質は堅強。成長拡大に向けた投資をやっていく中で大きな障害になる金額ではないと考えている」

3-1 杭打ち問題が起きた際に取締役会が開かれないまま社長の会見があった。社外取締役からガバナンスについて説明してほしい。
小堀「取締役会の開催内容や有効性は毎年チェックしている」
市野取締役「杭問題以降、取締役会は活性化している。情報も事業会社から早めに上がるようになっている。二度とないと確信している。7年間社外取締役をやってきたが、取締役会に与える緊張感が緩むのではと思い退くことにした」
白石取締役「取締役会は開催されなかったが情報交換は行われていた。形式的には開催されなかったが情報把握はできていた。事業領域が多様で潜在的なリスクもある。杭問題以降は取締役会終了後に各事業から内容や経営方針、リスクなどの説明を受けて共有している」
立岡取締役「形が整えばうまく行くわけでなく、いかに改善して機能するのものにしていくかが大切。提案意見に迅速で前向きに取り組んでもらっている。企業価値の棄損させないよう議論を重ねて取り組みを強化している」

3-2 伊藤会長の退任理由について。また退職慰労金は発生するのか?
小堀「退職慰労金制度は123期の総会で廃止した」
伊藤「就任当時には会長の定年制がなかったため自ら75歳定年制を導入した。75歳に達したため退くというのが大きな理由。また杭問題の発覚は2015年だが発生したのは2005年であり、その頃に取締役だった者は自分のみ。浅野前社長が辞任した際に辞める選択肢もあったが、会長社長がやめてしまうのは会社の運営が上手くいかないこともあり、残って色々な整備をやらしてもらった。杭問題の責任を取るということも含まれている」

4-1 大阪北部地震の影響は?
小堀「大阪には繊維の拠点があるが従業員に被害はなかった。関係会社の工場で少し損害があったが操業には影響ない。物流関係は懸念、客に迷惑をかけないよう対処している。現時点では大きなトラブルはない」
4-2 普段の地震対策について。
小堀「BCPは重要な項目。各拠点において想定震度が起きた際の対応を考えて訓練している。海沿いでは津波への対応。医療機器も取り扱っているため患者にきちんと届くようなサプライチェーンのあり方も」
4-3 地震保険への加入は?
小堀「事業継続に支障を来さないよう火災保険や生産物賠償責任保険、利益保険などを適正な水準で。具体的な金額は差し控えたい」
5-1 官僚的になっていないか?若手が自由闊達に活動できるように心掛けていることは?
小堀「事業責任者が業績発表のあと現場を回って状況を報告している。会社の状況や方針を現場にしっかりと浸透させる。現場が自主的に主体的に取り組める環境を作ることが重要でありそういう視点でのマネジメントを心がけている」
6-1 繊維事業の4つの素材とは?
小堀「再生繊維ベンベルグを延岡で増設、用途開発を行っている。弾性繊維ロイカはスポーツ衣料や紙オムツで競争優位性があり拡大を図る。レオナ繊維はタイヤコードが中心だったがエアバッグ素材として注目されており、延岡での増設を決定。不織布事業も強化しており人工皮革のラムースも延岡で増設」
6-2 ベンベルグの競合状況は?
小堀「オンリーワンの製品であり現時点で競合はない。他社が撤退する中で粘り強く研究開発に注力してきた。グループとしてもシンボル的な事業としてやっていく」
6-3 AIやIoTの強化について教えて欲しい。
中尾副社長「製造現場での製作技術の向上、研究開発の加速、技術の競争力分析の3つ。我々は3年以上前から調査をしてきた。全社を上げて技術者の育成に取り組んでいる。技術向上ではセパレータや住宅部材など。研究開発ではすでに成果が上がりつつあり、樹脂のコンパウンドが一回で最適な組成ができるようになった。触媒開発でも10倍くらいのスピードでできると結果が得られた。競争力分析では知財の価値評価をしてM&Aに活かすことも」
6-4 バイオや遺伝子分野への参入は?
小堀「大きなトレンドとは考えているが事業にまでは至っていない」
7-1 リチウムイオン電池のセパレータについて。旭化成の優位性や今後の見通しを教えてほしい。
小堀「成長エンジンとして注力する。重要事業であり積極的な投資や人材の投入をしていく。製造方法において当社は湿式得意としていた。乾式に特化していたポリポア社の買収により、湿式と乾式の2つの製造方法を持つのは大きな強み。日本とアメリカで増設計画を打ち出している。引き続き積極的な投資を行っていく」
7-2 配当性向について。
小堀「今回は27.9%、30%をメドに展開してきた。中計最終年度の2018年は総還元成功35%を計画で打ち出している」
8-1 社外取締役の取締役会の出席率が低い。
小堀「100%の出席率を期待したいところだが個人の生活もあって止む得ない事情もある。この出席率なら十分対応できていると感じている。発言や考え方が重要。事前に説明に行って意見を聞くよう務めている」
8-2 内部通報制度について。
柿澤「2005年に導入。窓口は2つあり、コンプライアンスホットラインでは事務局を決めてEメール等で匿名通報でき、もう一つは外部の法律事務所。2015年には購買先や外部取引先にも伝えて対象にしている。消費者庁のガイドラインを元に本人保護や守秘義務は重要なポイントとしてチェック。件数は右肩上がりで増えており年間40~50件。通報が増えているのは従業員から信頼されていると考えている。今回の見直しでは通報の対応が適正だったかを監査役会で評価する形にした」
8-3 株主還元について。
小堀「総還元性向35%を打ち出している。成長戦略への投資を行う中で資本政策や株主還元をしっかり考えて新中計を練っていく」
9-1 以前の総会質疑では住宅関係の個人的なクレームが多くて残念に思っていた。総会にまで持ち込まれないような対応をしてほしい。
小堀「仕事の進め方は住宅関係者の中で徹底していきたい」
9-2 ゾール・メディカルとポリポアの買収効果について。
小堀「ゾールは2012年買収し年平均15%の成長をしてきた。のれん償却も含めて黒字化できている。前期は営業利益198億円。1800億円で買収したが仮に今売るなら1兆円に近い価値がある。ポリポアはEVやスマホ向けに着実に伸ばしている。こちらものれん償却を含めて黒字化できている。将来の成長エンジンになると確信している。ゾールは馴染みのなかった分野のため経営陣全員に残ってもらい現在もそのメンバーで経営。日本と異なる経営スタイルを学ぶことができた。有望な技術を取り組みでもゾールの経営者が活躍している」
9-3 海外子会社のリスクマネジメントは?
小堀「ポリポアでは旭化成の経営陣が乗り込み方針をポリポアと擦り合わせている。ゾールはある程度任せている。医療機器はアメリカではFDAが品質をチェックしているため、我々は第三者的な立場でしっかりモニタリングしている。内部統制、内部監査はできており、逐次取締役会にも状況説明している」

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最低投資金額が下がった銘柄を見つけると総会カードを充実させる目的で買ってしまうアレです。
世の中にはこういう輩もいるので分割併合や単元変更の際は気をつけましょう。

化学は個別質問がなくて良いなーと思いながら聞いていたのですが、質問者の方が仰るには例年は多いようですね。
でも小売りやサービス業の総会で出てくるものと比べれば、住宅ははるかに大きな金額なので言いたくなる気持ちはわからなくはないです。
まあ周りがウンザリさせられるのは同じですが。

株主総会で会長がどっぷりと話す光景は珍しいです。
(昨日のコロワイドは極めて特殊な例なので除くとして)
長く経営の中枢にいられた方が退任に伴い挨拶するという意味では自然ではあります。
ただどうしても旭化成の会長職というと院政経営と言われていたことが頭に浮かんでしまって。
先週のダイヤモンドでも総会のツッコみどころとして「名誉会長の役割」と書かれていたことを思いだしました。

それにしても化学業界はお土産配布を続けている企業が多くてやはり株主に優しい。。。

2018/06/28追記
公式サイトにて事業報告で使われた動画が視聴できます。
よろしければどうぞ。

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お土産は先渡しです。
自社製品の詰め合わせ(サランラップ2種類,クッキングシート,Ziplocフリーザーバッグ,Ziplocスクリューロック)です。
飲み物はミネラルウォーターのペットボトル(インターコンチ仕様)でした。
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30cm幅のは2年前の日立化成で戴いたものが余裕で残っているので、合わせて後3年は戦えそうです。
よく使う15cmの方はクレラップ教徒でしたがこれを機に改宗したいと思います。