いちご[2337] 第18期定時株主総会
場所:第一ホテル東京 ラ・ローズ
日時:2018年5月27日(日) 午前10時

[2019年の記事はこちら]
[2017年の記事はこちら]

いちごの株主総会出席は5年連続5回目です。

出席者は400名程度です。

議長はキャロン会長が務めました。
総会の流れは以下の通りです。
・登壇役員紹介
・事業報告(スライド+長谷川社長)
・監査報告(藤田取締役)
・議案説明(石原副社長,長谷川)
・質疑応答 10時22分~
・議案採決
閉会は11時30分です。

質疑応答の形式は以下の通りです。
-係員がマイク持参
-特に制限なし

1-1 株主の情報開示請求での対応に不満。
キャロン「日本の法律以上の対応をしてきたつもりだが残念。株主の権利を守る姿勢を取っているつもり。今回の1号議案は株主の権限を拡充するもの」
2-1 以前の総会で株主から出た意見を取り入れた定款変更は素晴らしい。
キャロン「昨年に株主から提案を受けた内容。当社は株主提案だから反対ということはやらない。良い提案は喜んで検討する。感謝する」
2-2 金融緩和が出口に向かう中での金利上昇対策について。
キャロン「低金利環境下だからこそ借り入れを長期化、固定化している。10年1%くらいで借りている。マクロヘッジもかけている。低金利が続かなくても財務基盤に悪影響を与えない。金利上昇局面では賃料も上がるが、我々は金利を固定しているので楽しみな状況なのかもしれない」
3-1 太陽光発電について。降雪など悪天候時における電力の安定供給に向けたバックアップ体制は?
キャロン「パネルに雪が積もることは想定した上で設置している。発電した電気を電力会社に買ってもらえる契約で、供給が弱まる1,2月は電力会社が別の電源で補完している。バックアップ体制を整えるのは当社ではなく電力会社。ここ5年の実績として安定性、質の高い供給はできていると思う」
4-1 増配は続いているものの同業他社と比べて見劣りする。
キャロン「成長企業として一定の配当を出しつつ、できるだけ成長投資に使って一株利益を増やしていきたい。当社の成長は終わってない。現時点では毎年増配する銘柄にしたいのと同時に、一株利益を増やしていく成長性や安定性の高い会社でありたい。配当性向を高めるときは成長企業から成熟企業に変わる悲しい日かもしれない」
5-1 子供も株主総会に出席させたい。経営などを学べる機会にしてほしい。
キャロン「面白い。ニーズがあるか確認した上で前向きに検討したい。株主から色々なことを聞いて取り入れていきたい」
6-1 株価について。ここ2年であまり変わっていない。
キャロン「値動きは不満。成長企業の株価には業績先行と株価先行があり、いちご株はここ5年で株価先行から業績先行に変わってきた。5年前はPER180倍だったが今は16倍。日本企業の平均値ではあるが当社は平均企業より成長性は高い。業績を上げて株価を上げる局面に来た。いずれは株価に反映しないといけない。持続成長がカギ、見守ってほしい」
7-1 人員状況について。現状で何年くらい戦える想定か?人手不足の中で優秀な人材の確保は?
キャロン「従業員数が大きく減ったのはビル清掃をしていた子会社を売却したため。前期は2名採用、今期は30名新規採用する。これまでは資産を要する事業をやっていた。それも続けていくが、知恵を絞り資産を要さない新しい取り組みを入れたい。幸いなことに採用難はない」
7-2 今期の業績に30名採用の人件費等は織り込まれているのか?
キャロン「入っている」
8-1 現状で法的に係争している案件、今後しそうな案件はあるのか?
キャロン「どちらもない」
8-2 社員へのコンプライアンス教育について。
キャロン「正しいことしかやりたくないので正しいと思わなかったらやるなと言っている。コンプライアンス研修も毎年やっている。一期一会という企業理念をみんなで共有することが大事」
9-1 セルフストレージ事業について。セキュリティ対策は?
渡邊常務「契約者には電子錠を渡している。そこからログを取得することで物件に入った時間などの情報を認識している。また全ての物件に監視カメラを設置しモニタリングをしている。何かあった際は警報装置を押せばすぐに警備員が駆けつける体制になっている」
10-1 ストック収益とフロー収益の割合は今後も1:1くらいで進んでいくのか?
キャロン「ストック収益をできるだけ増やそうとしている。可能なら将来的には6~7割に持っていきたい」
10-2 将来収益の増加ペースについて。オリンピック後に見込まれる不動産価格の下落対策は?
キャロン「経済利益が会計利益より高いのが当社の特徴。心築で資産価値を高めて売却時に突然益を計上することになる。我々の含み益を過小評価している。将来のフロー収益のストックはたくさんある。オリンピック後に落ちるか落ちないかはわからない。落ちる可能性はありえるためシナリオの一つとして心築を行なっている」
10-3 太陽光と風力以外の再生可能エネルギー発電は?
キャロン「地熱も当然検討しているが、最も有望なのは太陽光と風力で安定性や経済性が高い」
11-1 シェアオフィス事業をどのように考えているか?
キャロン「我々も進出している。保守的な企業なので小規模スタートが基本路線。五反田にあるいちごオフォスリートのビルでやっている。流行りもあり単価も高いが継続的に見極める必要がある。上手く行くようなら拡大する」
11-2 五反田のオフィスの見学は可能か?
キャロン「もちろん。是非お客様になってほしい」

休憩を挟み11時47分から株主説明会に入りました。
流れは以下の通りです。
・登壇役員紹介
・プレゼン(長谷川)
・質疑応答 12時16分~
終了は13時20分です。

1-1 リートに物件を引き渡し、いちご本体としてはバランスシートに物件を持たないような経営の考えは?
長谷川「当社としてはバランスシートを使って取得し賃料収入を享受しながら、リートの求めがあれば売却しオンバランスではないストック収入に切り替えるモデル。保有する2000億円の物件全てに適用するかはリートとのバランスやタイミング次第。バランスシートに物件を持つからこそ新しい付加価値をつけていくチャレンジができるところもある。不動産の中で行なう事業を当社が作り出すことで、オーナーではない収益を作り出すことに挑戦している。マーケットが崩れたときの減損リスクは付いてまわる。大きな減損ならないように手当ては必要」
キャロン「収益性の高くないものをファンドに入れるのはファンドの投資家に対してあり得ない。オンバランスで価値向上が可能なものに特化する戦略を取っている。減損リスクを避けるため良い資産を良い形で運営する。しっかりとしたバランスシートの経営をしていく」

1-2 セルフストレージ事業について。他社サービスとの違いは?将来的なファンド化は?
渡辺「最大手のキュラーズは大きなビルを立ててその中を全てストレージにしている。当社は小さなものをたくさんやっている。初期投資も少ないし稼働率を上げる時間もかからない。2億円程度のストレージ用物件を急速に展開している。機動性を高めて早めにニーズを取り込む作戦。またコンビニの2階への展開も。コンビニ客に認識してもらえることが大事。安全安心きれいのため女性にも使ってもらえる。関心があればいちごオーナーズのオーナーに売却することもイメージしている。業界の活性化のために機関投資家を招き入れる動きはある。将来的には大型な物件はファンド化もトライしたい」
長谷川「ストレージは一度埋まると出にくい傾向がある。先に出したもの勝ちなところがある。小ぶりなものをたくさんやる戦略は正しいと思っている」

2-1 ホテルの割引券などいちごの物件を理解できるような優待があると良い。
キャロン「私もそう思う。ホテルだけでなく商業施設も保有しているのでテナントのためになるような優待ができれば。前向きに検討しましょう」
長谷川「商業施設やホテル、ストレージなどの客に来店してもらえるようなものは優待を出すメリットを感じている。かつてはマンションやオフィスが多くてやりにくかったが、今ならテナントの売り上げを伸ばすきっかけにもなる」
3-1 トレードピアお台場の取得から一年経ったが、大型物件に対する考えは?
長谷川「一年のタイミングでは上手くいったという認識。物件の取得を試みてるが買えていないのが実態。大型物件でも当社のビジネスモデルは通用する」
4-1 大型物件でのリスクは?
長谷川「トレードピアだけでバランスシート全体の15%くらいを占めている。ポートフォリオの比率が高くなるため慎重にやらないといけない。大型化してもやるべき内容は変わらないが業務の効率は上がる。今のバランスシートならもう1~2物件というのはある。全部バランスシートで持つわけではなくタイミングを見てオフバランス化も。300億円クラスではそこまででもないと思っていたが競争は活発。今はどのサイズでも不動産の取得ニーズは高い」
5-1 災害対策について。
長谷川「保有物件は新耐震基準でおすみ付きのあるものを買っている。旧耐震のものも多少あるが補強している。場合によっては地震保険によるヘッジもかけている。クリーンエネルギー事業も天災を想定しながら事業を行っている」
キャロン「東日本や熊本の地震で得た教訓は日本の耐震基準が優れている一方で津波に無力だった点」
5-2 株主総会の日曜開催は今後も続けていくのか?
長谷川「日曜開催は100%続けていく(キャロン会長もウンウンと頷く)」
6-1 株主総会での経営陣と株主とのやり取りが毎年素晴らしい。Webで情報発信してほしい。
キャロン「Web配信も考えてはいる。事実無根なことを言われることがあり、それが開示で流れるとどう思われるかを心配している。株主を重視する会社としてはやってもいい。前向きな検討」
長谷川「オープンな情報発信は常に検討すべきと思っている」

6-2 一般人に向けたいちごのブランド価値向上について。
キャロン「経営的に取り組まないといけない。その通り」
7-1 不動産の相続問題に関してもいちごオーナーズで解決してもらえるのか?
長谷川「いちごオーナーズを立ち上げた趣旨は不動産保有者の悩みを聞いて解決するというもの。そういったニーズは多い。社会的な課題を解決するところにはビジネスチャンスはある」
8-1 ホテルの優待を出すのなら戦略や差別化した点の説明を添付してほしい。
長谷川「その際はしっかりと対応する。優待関係なく説明すべきだった」
9-1 太陽光の業績寄与は?買取期間20年が経過した後の戦略は?
五島いちごECOエナジー社長「30年続けるつもりで施設は設計されている。20年後には再生エネの取引市場ができている。我々は再エネ専門の電力会社を目指していくと思う。安価で安全なクリーンな電気を供給しながら拡大していく。目標は1GW」
キャロン「保守的なので発電設備を買取期間以内に減損する。太陽光の利益貢献は1割くらい」
10-1 太陽光と比べた際の風力の利益率やリスクは?
五島「25%くらいプラス。風による変動幅が年に10~15%あり、太陽光は3~5%。風車メーカーの稼働保証が付き、保険によるヘッジもしている」
10-2 ホテル事業のTHE KNOTについて。将来的に運営もいちごがやっていく考えは?
長谷川「現状は元々20〜30年運営をしているブランドあるものをKNOTに展開することが多い。基本的にはオペレーターのいるもの。浜松町のMusBeeでは自社オペレーションも始めている。KNOTに限らず常に自社オペは検討」
11-1 金沢のホテル物件に関して詳細を聞きたい。
長谷川「KNOTシリーズではない。2,3年前にデベロッパーから相談を受けて取得。当社はオーナーでオペレーターは別」

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H氏お久しぶりです。
いつものように初っ端で質問を投げられたあと、回答を聞かずに静かに帰られました。

総会の雰囲気は悪くなかったです。

株主優待新設を希望する意見は前からあったのものの性質が変わってきました。
以前はクオカードがよく挙げられていたところ、今回はいちごの物件で利用できるものに。
総会内でも言われていたのですがBtoCビジネスが増えてきたことが大きそうです。
回答する経営陣の温度も悪くなかったと思います。

いちご総会の一番の特徴である日曜開催はやめないそうです。
ありがたいですね。

あとは総会内容の情報発信についても提案が出ていました。
いちごならきっと対応してくれると信じて…
自分が行っている中では、動画を上げている企業は資生堂,アステラス,Jフロントなどがあります。
それでも多くは事業報告まででプライバシーの問題もあってか質疑応答の様子まで上げてる企業は記憶にないですね。
ユーグレナはそれにプラスして質疑応答をQ&A形式で記述しています。
もしやるのであればこのやり方がベストなのかなと思います。

今回の議案は前回の総会での株主の提案を参考にしたものでした。
意見を目に見えた形で反映してもらえるのは株主としても出席した甲斐がありますよね。
中には「子供を呼びたい」といったものもありました。
こういう提案も言いやすいのはいちごの総会とのいいところです。
経営陣と株主の近さを改めて感じます。
株主総会はただのガス抜き場ではないと、企業側の良心を見ることができた総会でした。

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お土産は先渡しです。
NOLTYのA5ノートです。
飲み物はお茶のペットボトルです。
その他には上述した通り、総会と説明会間の休憩時間にドリンクサービスが利用できます。
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